2019年5月21日火曜日

おくのほそ道 曽良本と早大本と昔安本と通解について part1

先に「おくのほそ道の系統図」のところで書きましたが、早大本と昔安本と通解は同じ親本から出ています。そしてその親本は、曽良本を直接参照して書かれた曽良本の清書本であるようです。ではどうしてこのようなことが言えるのか、「奥の細道諸本異動の対照表」をもとに具体例を示していきたいと思います。

(西村本) 影印 おくのほそ道 櫻井武次郎編 双文社出版/ (井筒) 元禄版 おくのほそ道 雲英末雄編 勉誠社
(柿衛本) 素龍筆 柿衛本 おくのほそ道 岡田利兵衛編 新典社
(河西本) 河西本 おくのほそ道 村松友次 笠間書院
(曽良本) 天理図書館善本叢書〈和書之部 第10巻〉芭蕉紀行文集
(自筆本) 芭蕉自筆奥の細道 上野 洋三 桜井 武次郎 編 岩波書店
(早大本)  奥の細道 [寶永弐 乙酉 八月七日 (1705年9月24日) 書写] (雲英末雄旧蔵) 早稲田大学図書館 
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/bunko31/bunko31_a0171/index.html
(昔安本) 校本おくのほそ道 西村真砂子 編著 福武書店 p245-282影印
(通解) 奥細道通解 馬場錦江 (西尾市 岩瀬文庫 15‐イ76)
https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100067332/viewer/1
(早原本) 早大本と昔安本と通解の親本を「早大本原本」と想定します


・早大本と昔安本と通解が同系統であることを示す例
(早大本と昔安本と通解の同じ箇所が他の本と異なっている)
異同の部分だけでは短くてわかりにくいので、元禄板翻刻を基に見出しをつけました。
灰色は異同部分を示します。緑色は誤字・脱字・衍字  黄色は異字
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予もいつれの年よりか片雲の風にさそはれて
西村01a.06(予もいつれの)
柿衛02.06(予もいつれの)
曽良01a.05(予もいつれの)
自筆01a.06(いつれの)
早大06b.15-07a.01(予もいつれの)
昔安01a.04(予もいつれの)
通解1.02a.11(予もいつれの)
早原(予もいつれの)

昔安と通解のみが「又」という副詞が入っています。これは両者が同系統である一つの証拠となります。
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江上の破屋に蜘の古巣をはらひ
西村01b.01(はらひて)
柿衛02.09-10(はらひて)
曽良01a.08(はらひて)
早稲田07a.04(はらひて)
昔安01a.06(て)
通解1.02a.12(拂ひて)
早原(はらひて)
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白川の関こえんとそゝろ神の物につきて
西村01b.03(そゝろ神)
柿衛03.01(そゝろ神)
曽良01a.09(そゝろかみ)
早大07a.05-06(そ/\かみ)
昔安01a.08(そゝかミ)
通解02b.01(さそひ神)
早原(そ/\ひかみ)

早大本と昔安本では「ろ」を「ひ」と誤っています。「そゝろかみ」という神様の名前について同じ間違いをしているところから、両者が同系統である一つの証拠となります。

これは早原本の段階で、曽良本を読み間違えたのではないかと思います。

曽良本01a.09(そゝろかみ)
曽良本01a.09(そゝろかみ)
「ろ」が「ひ」にも読めます。

通解はもともとは「そゝひかみ」であったのが、早原本が代を重ねて写される過程で、意味の通じる「さそひ神」に変わっていったのではないかと思います。
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道祖神のまねきにあひて
西村01b.04-05(まねき)
柿衛03.03(まねき)
曽良01b.01(まねき)
早大07a.07(まねき)
昔安01a.09(招キ)
通解1.02b.02(き)
早原(まねき)
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住る方は人に譲り杉風か別墅に移るに
西村02a.01(別墅に移るに)
柿衛03.07-08(別墅にうつるに)
曽良01b.05(別墅に移るに)
早大07a.11(別墅に移る)
昔安01a.12(別墅に移に)
通解1.02b.04(別墅にうつる)
早原(別墅に移る)
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面八句を庵の柱に懸置弥生も末の七日
西村02a.03(懸置)
柿衛03.10(懸をき)
曽良01b.07(懸置)
早大07a.13(懸置)
昔安01b.02(かけ置)
通解1.04b.08(かけ置)
早原(懸置)
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むつましきかきりは宵よりつとひて
西村02a.08(かきりハ)
柿衛04.05(かきりは)
曽良02a.03(かきりは)
早大07b.03(かきりは)
昔安01b.05(ハ)
通解1.08a.09(りハ)
早原(かきりは)
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西村03b.06(室の八嶋に詣す)
柿衛06.08(室の八嶋に詣す)
曽良03a.03(室の八嶋に詣ス)
早大08a.11(室の八嶋に詣)
昔安02a.09(室の八嶋に詣)
通解1.08b.03(室の八しまに詣)
早原(室の八嶋に詣ツ)

早大本と昔安本と通解が、「詣つ」「詣ツ」「詣つ」と他の本と異なった表記になっています。

これは早原本の段階で、曽良本の「詣ス」を(まうズ)と読み、(ズ)を下二段活用の(ヅ)に直して「詣ツ」としたのではないかと思います。
「詣ス」は(けいス)と読むのが通説のようです。
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黒髪山は霞かゝりて雪いまた白し
西村05b.02(霞かゝりて)
柿衛09.07(霞かゝりて)
曽良04a.06(霞かゝりて)
早大09a.08(霞かゝりて)
昔安03a.04(霞かゝりて)
通解1.13a.04(霞かゝりて)
早原(霞にかゝりて)

これは、早原本の段階で曽良本の「霞」を「霞に」とよみ間違えたのではないかと思います。

曽良04a.06(霞かゝりて)
曽良04a.06(霞かゝりて)
赤で囲んだ部分は実際は「霞」の一部なのですが、独立して「尓(に)」のようにも見えます。
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廿餘丁山を登つて瀧有
西村06a.06(廿餘丁)
柿衛10.08(廿餘丁)
曽良04b.06(二十餘丁)
早大09b.04(二十餘)
昔安03b.01(二十餘)
通解1.14a.06(二十餘)
早原(二十餘町)
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与市扇の的を射し時別しては我国氏神正八まんと
西村08a.08(別してハ) 明和版では(別して)
柿衛14.02(別てハ)
曽良06a.06(別てハ)
早大10b.08(別而)
昔安04b.01(別して)
通解1.18b.08(別してハ)
早原(別而・)
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此関は三関の一にして風騒の人心をとゝむ
西村11a.06(風騒) 騒→(馬+喿)
柿衛18.06(風騒) 騒→(馬+喿)
曽良08a.09(風騒) 騒→(馬+喿)
早大12a.07-08(風) 
昔安05b.12(風)
通解2.01a.04(風)
早原(風騒)
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沼を尋人にとひかつみ/\と尋ありきて
西村13b.02-03(人にとひ)
柿衛22.02(人にとひ)
曽良10a.05(人にとひ)
早大13a.15-13b.01(人に)
昔安07a.06(人に)
通解2.06a.08(人に)
早原(人に問)
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丸山と云に尋あたる庄司か旧館也
西村14b.04(是)
柿衛23.08(是)
曽良11a.02(是)
早大14a.03(これ)
昔安07b.07(これ)
通解2.08.07(是)
早原(これ)
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西村15a.06(笈も太刀も五月にかされ帋幟)
柿衛24.08(笈も太刀もさつきに飾れ帋幟)
曽良11b.02(笈も太刀も五月にかされ帋幟)
早大14a.13(太刀も笈も五月にかされ帋幟)
昔安08a.03(太刀も笈も五月にかされ幟)
通解2.09a.08(太刀も笈も五月にかされ幟)
早原(太刀も笈も五月にかされ帋幟)

早大本と昔安本と通解では「笈も太刀も」が「太刀も笈も」と逆になっています。
この句の前に、「爰に義経の太刀弁慶か笈をとゝめて什物とす」とありますので、これが頭に残っていて、「太刀も笈も」と誤ったようにも思われます。
この部分については、後ほどもう少し詳しく見てみたいと思います。
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云道祖神の社かた見の薄今にありと教ゆ
西村16b.05(今にありと教ゆ)
柿衛27.01(今にありとをしゆ)
曽良12b.03-04(今にありとをしゆ)
早大15a.05(今にとをしゆ)
昔安08b.07-08(今ニとをしゆ)
通解2.10b.11-12(今にありとをしゆ)
早原(今に有とをしゆ)
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玉田よこ野つゝしか岡はあせひ咲ころ也
西村18b.02(よこ野)
柿衛29.08(横野)
曽良13b.09(よこ野)
早大16a.03(よこ)
昔安09b.07(よこ)
通解2.15a.05(よこ)
早原(よこの)
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あやめ艸足に結ん草鞋の緒
西村19a.04(足に結ん)
柿衛30.09(足に結はん)
曽良14a.09(足に結ん)
早大16a.15(足に結ん)
昔安10a.04(足ひて)
通解2.16b.02(足ひて)
早原(足に結んて)

早原本では、曽良本の「結ん(むすばん)」との読みを思いつかず、「結んで」と読み直したのかもしれません。そして昔安本では「結んで」を「結びて」としたのではないかと思います。
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今も年々十符の菅菰を調て国守に献すと云り
西村19a.08(云り)
柿衛31.03(いへり)
曽良14b.03(云り)
早大16b.04(り)
昔安10a.07(・)
通解2.16b.07(いへり)
早原(言り)
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つほの石ふみは高サ六尺餘横三尺計歟
西村19b.02-03(三尺計歟)
柿衛31.05-06(三尺計歟)
曽良14b.05(三尺計歟)
早大16b.06-07(三尺計)
昔安10a.09(三尺計)
通解2.17a.11(尺はかり歟)
早原(三尺計歟)

もしかすると、早原本の「歟」のくずしがわかりにくく、早大本では「可(か)」と仮名にし、昔安本では「歟」とは読めずに強引に「也」と読んだのではないかと思います。
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按察使鎮守苻将軍大野朝臣
西村19b.05(鎮守符) [符][苻]の判別はつかない 
柿衛31.08(鎮守符) [符][苻]の判別はつかない
曽良14b.07(鎮守符) [符][苻]の判別はつかない
早大16b.09(鎮守)
昔安10b.01(鎮守)
通解2.17b.11(鎮守)
早原(鎮守府)
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東海東山節度使
西村19b.07(節度使)
柿衛31.10(節度使)
曽良14b.09(節度使)
早大16b.11(節度使)
昔安10b.03(節使)
通解2.17b.12(節度使)
早原(節度使)

度 慶

この部分は「壷碑」の写しなので、早原本も楷書で書かれていたものと思われます。

早原本の「度」は早大本の「度」に近いもので、昔安はそれを「慶」と見誤ったのではないかと思います。
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西村22b.02(名もまた是にしたかふと云り)
柿衛36.05(佳名も又是に従ふといへり)
曽良16b.07(名も又是にしたかふと云り)
早大18a.08-09(名も又是にしたかふとり)
昔安11b.10(名もまた是にしたかふとり)
早原(名も又是にしたかふと言り)
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ことふりにたれと松嶋は扶桑第一の好風にして
西村22b.05(抑)
柿衛36.08(抑)
曽良17a.01(抑)
早大18a.12()
昔安12a.01(いさゝか)
通解2.25b.07(抑)
早原(抑)

曽良本では次のように添削されています。

曽良17a.01抑事ふりにたれと松嶋ハ扶桑、第一の好風にして
曽良17a.01

「抑松嶋ハ扶桑第一の好風にして」
事ふりにたれと」挿入
「抑事ふりにたれと松嶋ハ扶桑第一の好風にして」

添削前の文では、「松嶋ハ扶桑第一の・・・」とはなり得ません。
添削後の文では、「事ふりにたれと・・・・」となり得ます。

曽良本を写す際、「抑」を「聊」に変えるということは、故意に変えたということになります。しかし早原本で故意に文意を変えて「聊」にするという可能性は低いと思いますので、早原本でも「抑」となっていたのが、その字が「聊」に近かったために、早大本と昔安本で読み違えたという可能性が高いように思います。

早大18a.12(聊)
早大18a.12(聊)
抑は「扌+卬」 聊は「耳+卯」

左側のヘンを見ると「扌」のように見えますが、赤丸の部分が気になります。
右側のツクリを見るとこれは「卯」です。
以上のことからこの字を「聊」と判断しましたが、早大本の筆者は「抑」のつもりで書いたという可能性もあります。
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天工いつれの人か筆をふるひ詞を盡さむ
西村23b.03(詞を盡さむ)
柿衛38.02(詞を盡さん)
曽良17b.02(詞を盡さむ)
早大18b.11(詞をつくさむ)
昔安12a.12(詞をつくさむ)
通解2.27a.05(詞を盡さん)
早原(詞をつくさむ)
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杉風濁子か発句あり
西村24b.06(発句あり)
柿衛40.01-02(発句あり)
曽良18a.07(発句有リ)
早大19a.14(発句有)
昔安13a.03(発句有)
通解2.28a.09(発句あり)
早原(発句有・)

曽良18a.05(詩有)  曽良18a.06(袋を)  曽良18a.07(発句有リ)
曽良18a.05(詩有)
曽良18a.06(袋を)
曽良18a.07(発句有リ)

早原本では、曽良本の「詩有」「発句有リ」を行末ということもあり混同したり見落としたりしたのかもしれません。
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十二日平和泉と心さし
西村25a.06(平和泉と心さし)
柿衛41.01(平和泉と心さし)
曽良18b.04(平和泉と心さし)
早大19b.07(平心さし)
昔安13a.09(平泉と心さし)
通解3.01a.03(平泉と心さし)
早原(平・泉と心さし)
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石の巻といふ湊に出
西村25b.02(湊に出)
柿衛41.05(流に出す)
曽良18b.07(湊に出ス)
早大19b.11(湊に出)
昔安13a.12(湊に出)
通解3.01b.09(湊に出)
早原(湊に出ぬ)

早原本で曽良本の「出ス」を「出ヌ」と読み違えたのかもしれません。

曽良18b.07(出ス)   曽良32a.06(尋ヌ)
曽良18b.07(出ス)
曽良32a.06(尋ヌ)

「ス」と「ヌ」は混同しやすいかもしれません。
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日既暮けれは封人の家を見かけて舎を求む
西村28b.01(日既暮)
柿衛46.01-02(日既くれ)
曽良20b.05(日既暮)
早大21a.11-12(日既暮)
昔安14b.07(日すて暮)
通解3.08b.06(日既暮)
早原(日既に暮)
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あるしの云是より出羽の国に
西村28b.05(あるしの云)
柿衛46.06(あるしのいはく)
曽良20b.09(あるしの云)
早大21b.01(あるしの)
昔安14b.11(あるしの)
通解3.08b.12(主の云)
早原(あるしの言)
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跡に聞てさへ胸とゝろくのみ也
西村29b.08-30a.01(とゝろくのみ也)
柿衛48.06(轟くのみ也)
曽良21b.04(とゝろくのみ也)
早大22a.03(とゝろくのみなり)
昔安15b.02(とゝろくのみなり)
通解3.09b.06(とゝろくのミ也)
早原(とゝろくのみなり)
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尾花澤にて清風と云者を尋ぬ
西村30a.02(尾花澤)
柿衛48.07(尾花澤)
曽良21b.05(尾花澤)
早大22a.06(尾花)
昔安15b.02(尾花)
通解3.09b.11(尾花澤)
早原(尾花沢)
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尾花澤にて清風と云者を尋ぬ
西村30a.02(云者を)
柿衛48.07(云ものを)
曽良21b.05(云ものを)
早大22a.06(ものを)
昔安15b.03(ものを)
通解3.09b.11(いふものを)
早原(言ものを)
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西村31b.06-07(みちしるへする人しなけれはと)
柿衛51.05-06(みちしるへする人しなけれはと)
曽良22b.09(道しるへする人しなけれはと)
早大23a.04-05(道しるへする人なけれはと) (し)脱
昔安16b.04-05(道しるへする人なけれはと) (し)脱 
通解3.12b.09-10(道しるへする人なけれハと)  (し)脱
早原(道しるへする人・なけれはと) (し)脱
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わりなき一巻残しぬこのたひの風流爰に至れり
西村31b.08(このたひの風流)
柿衛51.07(此度の風流)
曽良23a.01(このたひの風流)
早大23a.06(此たひ風流)
昔安16b.06(此たひの風流)
通解3.12b.10(此度の風流)
早原(此たひの風流)
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四日本坊にをゐて誹諧興行
西村33a.01(本坊にをゐて)
柿衛53.05(・坊にをゐて)
曽良23b.03(於本坊)→(本坊にをゐて)
早大23b.08(本坊にゐて)
昔安17a.06(於本坊)
通解3.14b.12(於本坊)
早原(本坊におゐて)

この文は曽良本では次にようにい添削されています。


曽良23b.03「四日本坊にをゐて誹諧興行」

1.「四日於本坊俳諧興行」
2.「四日於本坊一ニ俳諧興行」一・二点などが加えられ、「於」「俳」の左に見せ消ち。
3.「四日本坊一ニ俳(誹)諧興行」「於」が消され、「俳」の右に「誹」
4.「にをゐて」挿入
5.「四日本坊にをゐて俳(誹)諧興行」

昔安本では曽良の添削前の「於本坊」となっており、早大本では添削後の「本坊におゐて」となっています。
では、早原本ではどうであったのかを想像してみると、早大本の「おゐて」という部分が手がかりになると思います。

本来「於」という漢字なのですから、「おいて」と仮名にするのが自然だと思うのですが、曽良本では差別化をはかるためか? 「をゐて」としています。


早大23b.08

早大本では「本坊に於(お)ゐて」となっています。しかも「於」は、漢字と同等の大きさになっています。これは「於本坊」を意識して「於(お)」を使っていると思われます。しかし「於いて」ではなく「於ゐて」としてるわけですから曽良本の「をゐて」を踏襲しているとも言えます。
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雲関に入かとあやしまれ息絶身こゝえて
西村34a.07(息絶・)
柿衛55.08(息絶・)
河西24a.08(息絶・)
曽良24a.08-09(息-絶へ)
早大24a.14(息絶) 
昔安18a.01(息絶) (々)或いは(え)
通解3.17a.08-09(息絶)
早原(息絶々)


曽良24a.08-09(息-絶へ)

青丸の部分ですが、「へ」と書かれているようです。
しかし、西村本も柿衛本も河西本も「へ」とは認識しなかったようです。 おそらく点か何かだと考えたのだと思います。
そしてこれを、早原本は「ゝ(繰り返し記号)」と考えたようです。



「校本おくのほそ道」では昔安本を「息絶え」とされていますが、早大本を勘案すると、「息絶々」とするのが妥当ではないかと思われます。
しかし更に通解では「息絶え」と「え」になっています。


通解3.17a.09(絶え)

早原本では、曽良本の「絶へ」の「へ」をくり返しの記号と考え「絶々」とし、そこから「々」と「え」と二つの読みに別れ、通解では「絶え」となったという仮説はとてもロマンがあると思います。

現存する本で「息絶へ」と読んでいる本は、次の土芳本のみのようです。

土芳26b.01(息絶へ)

校本おくのほそ道 西村真砂子 編著 福武書店
p365  (土芳本影印p339-p378)
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岩に腰かけてしはしやすらふほと
西村35a.03(しはし)
柿衛56.10(しはし)
曽良24b.07(しはし)
早大24b.09(しはし)
昔安18a.08(し)
通解3.18b.11(し)
早原(しはし)
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西村35a.04(桜のつほみ半ひらけるあり)
柿衛57.01-02(さくらのつほみ半ひらけ半あり)
曽良24b.08(桜の、つほみ半に、ひらけるあり), (半)(ナカハ)ルビ有り
早大24b.10-11(桜のつほみ半にひらけけるあり)
昔安18a.09(桜の莟ミ半にひらける有)
通解3.18b.11-12(桜の莟ミ半にひらけるあり)
早原(桜のつほみ半にひらけけるあり)

この部分については、Part2に予定している曽良本との共通する部分として詳しくみてみたいと思います。
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西村35a.04-05(ふり積雪の下に埋て)
柿衛57.02-03(ふりつむ雪のしたにうつもれて)
曽良24b.08-09(ふり積雪の下に埋て)
早大24b.11-12(ふり積雪の下に埋て)
昔安18a.09-10(降積雪の下に埋て)
通解3.18b.12(降積雪の下に埋て)
早原(ふり積る雪の下に埋て)
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涼しさやほの三か月の羽黒山
西村35b.06(三か月) 
柿衛58.03(三か月)
曽良25a.07(三か月)
早大25a.06(三か月)
昔安18b.03(三月)
通解3.19b.11(三月)
早原(三か月)
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湯殿山銭ふむ道の泪かな 曽良
西村36a.01(泪かな 曽良)
柿衛58.06(泪かな 曽良)
曽良25b.01(なみたかな曽良)
早大25a.09(・・), (曽良)脱
昔安18b.06(なみた哉・・), (曽良)脱
通解3.20a.02(かな・・), (曽良)脱
早原(涙哉・・),(曽良)脱
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羽黒を立て鶴か岡の城下長山氏重行と云
西村36a.02(鸖か岡)
柿衛58.07(鸖か岡)
曽良25b.02(鸖か岡)
早大25a.10(鸖岡), (か)脱
昔安18b.07(か岡)
通解3.20a.06(ケ岡)
早原(鸖か岡)
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左吉も共に送りぬ
西村36a.04-05(共に送りぬ)
柿衛58.10(共に送りぬ)
曽良25b.03-04(共に送りぬ)
早大25a.12(共に送りぬ)
昔安18b.08-09(ともニ送りぬ)
通解3.20a.07(ともに送りぬ)

参考サイト
人文学オープンデータ共同利用センター
くずし字検索

2019.05.19
2019.05.25更新

与謝蕪村 奥の細道 上巻
与謝蕪村 奥の細道 下巻
12-13. 14. 15. 16-17. 18.


表紙 000 
1.序章 001 002 003.03
2.旅立 003.03 004 
3.草加 005 006.05
4.室の八島 006.06 007.05
5.仏五左衛門 007.06 008 009.01
6.日光 009.02 010 011 012.03
7.那須 012.04 013 014.06
8.黒羽 014.07 015 016.07
9.雲巌寺 016.08 017 018 19.07
10.殺生石・遊行柳 19.08 020 021.02
11.白河の関 021.03 022.06
12.須賀川 022.07 023 024 025.05
13.あさか山 025.06 026.06
14.しのぶの里 026.06 027.07
15.佐藤庄司が旧跡 027.08 028 029.07
16.飯塚 029.07 030 031.08
17.笠島 031.08 032 033.03
18.武隈 033.04 034 035.01
19.宮城野 035.02 036 037.04
20.壺の碑 037.05 038 039 040.03
21.末の松山 040.04 041 042.04
22.塩竈 042.04 043 044.04
23.松島 044.05 045 046 047 048 049.05
24.石巻 049.06 050 051.07
25.平泉 051.08 052
053 054 055.01
26.尿前の関 055.02 056 057 058 059.01
27.尾花沢 059.02 060.03
28.立石寺 060.04 061
29.最上川 062