与謝蕪村 奥の細道 京都国立博物館蔵 下巻 08
01.今日ハ親しらす子しらす犬もとり駒返し
02.なと云北国一の難所を越てつかれ侍れは
03.枕引よせて寝たるに一間隔て西のかたに
04.若き女の聲二人はかりと聞ゆ年老たる
05.おのこの聲も交りて物かたりするを聞ケハ
06.越後の國新瀉といふところの遊女なりし
07.伊勢参宮するとて此関まておのこの送りて
08.あすハ古郷に返す文したゝめてはかなき
09.こと傳なとしやる也白浪のよする汀に身を
10.はふらかしあまのこの世をあさましう下りて
11.定めなきちきり日々の業因いかにつたなしと
12.物云をきく/\寝入てあした旅立に我/\に
13.むかひて行衛しらぬ旅路のうさあまり覚束
14.なう悲しく侍れは見えかくれにも御跡をしたひ
15.侍らん衣の上の御情に大慈のめくみをたれて
16.結縁せさせ給へと泪を落す不便の
17.ことにハ侍れとも我/\ハところ/\にて
18.とゝまる方おほし只人の行まゝに
19.まかせて行へし神明の加護かならす
20.恙なかるへしと云捨て出つあはれさしはらく
21.やまさりけらし
22. 一家に遊女も寝たり萩と月
注:
03(西のかたに) 版39b.06(面の方に) 柿衛64.07(西のかたに)
18-19(行まゝにまかせて) 版41a.02-03(行にまかせて) 版本では(まゝ)に見える。特に明和版では(か)が一部欠損しているので、(行にまゝかせて)を誤刻と考え(行まゝにまかせて)と読み直した可能性が考えられます。
20(出つ) 元禄・寛政版41a.04(出つゝ) 元禄後刷・明和版では(ゝ)が欠損し(出つ)となっています。
与謝蕪村 奥の細道 京都国立博物館蔵 下巻 09
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略語記号:
(版):明和版 おくのほそ道
(海):海の見える杜美術館蔵
(京):京都国立博物館蔵
(山):山形美術館蔵
(逸):逸翁美術館蔵
版本に対して異同の色分け
黄色:漢字vsかな 橙色:送り仮名 水色:異体字 水色:別字 赤色:誤字・脱字・衍字
(異体字に関して一つの目安とお考え下さい)
01
(版).今日ハ親・しらす子しらす犬もとり駒返し 39b.03
(海).今日ハ親・しらす子しらす犬もとり駒返し
(京).今日ハ親・しらす子しらす犬もとり駒返し
(山).けふハ親・しらす子しらす犬もとり駒返し
(逸).今日ハおやしらす子しらす犬もとり駒返し [今日ハおや][今日おや][ハ]挿入
02
(版).なと云北国一の難所を越てつかれ侍れは
(海).なと云北國一の難所を越てつかれ侍れは
(京).なと云北国一の難所を越てつかれ侍れは
(山).なと云北国一の難所を越てつかれ侍れは
(逸).なと云北国一の難所を越てつかれ侍れハ
03
(版).枕・・引よせて寐たるに一間隔・・て面の方・に
(海).まくら引よせて寝たるに一間へたてゝ面の方・に
(京).枕・・引よせて寝たるに一間隔・・て西のかたに 柿衛64.07(西のかたに)
(山).枕・・引よせて寝たるに一間へたてゝ面の方・に
(逸).まくら引よせて寝たるに一間へたてゝ面のかたに
04
(版).若き女の聲二人計・・ときこゆ年老たる
(海).若き女の聲二人計・・ときこゆ年老たる
(京).若き女の聲二人はかりと聞・ゆ年老たる
(山).若き女の聲二人計・・ときこゆ年老たる
(逸).若き女の聲二人はかりと聞・ゆ年老たる
05
(版).おのこの聲も交・・て物・語・・するをきけハ 40a.01(物語する)
(海).おのこの聲も交・・てものかたりするをきけハ
(京).おのこの聲も交・りて物・かたりするを聞ケハ
(山).おのこの聲も交・・て物・かたりするをきけハ
(逸).おのこの聲もましりて物・かたりするを聞・は
06
(版).越後の国・新泻と云・所・・の遊女成・し
(海).越後の国・新泻といふところの遊女なりし
(京).越後の國・新瀉といふところの遊女なりし
(山).越後のくに新泻といふ所・・の遊女なりし
(逸).越後の国・新泻といふところの遊女なりし
07
(版).伊勢参宮するとて此関まておのこの送りて
(海).伊勢参宮するとて此関まておのこの送りて
(京).伊勢参宮するとて此関まておのこの送りて
(山).伊勢参宮するとて此関まておのこの送りて
(逸).いせ参宮するとて此関まておのこの送りて
08
(版).あすハ古郷にかへす文・したゝめてはかなき
(海).あすハ古郷にかへす文・したゝめてはかなき
(京).あすハ古郷に返・す文・したゝめてはかなき
(山).あすハ古郷にかへす文・したゝめてはかなき
(逸).あすハ古郷にかへすふミしたゝめてはかなき
09
(版).言・傳なとしやる也・白浪のよする汀に身を
(海).言・傳なとしやるなり白浪のよする汀に身を
(京).こと傳なとしやる也・白浪のよする汀に身を
(山).こと傳なとしやる也・白浪のよする汀に身を
(逸).言・傳なとしやる也・白浪のよする汀に身を
10
(版).はふらかしあまのこの世をあさましう下りて
(海).はふらかしあまのこの世をあさましう下りて
(京).はふらかしあまのこの世をあさましう下りて
(山).はふらかしあまのこの世をあさましう下りて
(逸).はふらかしあまのこの世をあさましう下りて
11
(版).定・めなき契・・日々の業因いかにつたなしと 40b.01(かにつたなしと)
(海).定・めなき契・・日々の業因いかにつたなしと
(京).定・めなきちきり日々の業因いかにつたなしと
(山).定・めなき契・・日々の業因いかにつたなしと
(逸).さためなき契・・日々の業因いかにつたなしと
12
(版).物云をきく/\寐入てあした旅立に我/\に
(海).物云をきく/\寝入てあした旅立に我/\に
(京).物云をきく/\寝入てあした旅立に我/\に
(山).物云をきく/\寝入てあした旅立に我/\に
(逸).物云をきく/\寐入てあした旅立に我/\に
13
(版).むかひて行衛しらぬ旅・路のうさあまり覚・束・
(海).むかひて行衛しらぬ旅・路のうさあまり覚・束・
(京).むかひて行衛しらぬ旅・路のうさあまり覚・束・
(山).むかひて行衛しらぬ旅・路のうさあまり覚・束・
(逸).むかひて行衛しらぬたひ路のうさあまりおほつか
14
(版).なう悲・しく侍れは見えかくれにも御跡をしたひ
(海).なう悲・しく侍れは見えかくれにも御跡をしたひ
(京).なう悲・しく侍れは見えかくれにも御跡をしたひ
(山).なう悲・しく侍れは見えかくれにも御跡をしたひ
(逸).なうかなしく侍れは見えかくれにも御跡をしたひ
15
(版).侍・ん衣の上・の御情に大慈のめくミをたれて
(海).侍・ん衣の上・の御情に大慈のめくみをたれて
(京).侍らん衣の上・の御情に大慈のめくみをたれて
(山).侍らん衣の上・の御情に大悲のめくミをたれて
(逸).侍らむ衣のうへの御情に大慈のめくみをたれて
16
(版).結縁せさせ給へと泪・・を落す不便の
(海).結縁せさせ給へとなミたを落す不便の
(京).結縁せさせ給へと泪・・を落す不便の
(山).結縁せさせ給へと泪・・を落す不便の
(逸).結縁せさせ給へとなみたを落す不便の
17
(版).事・にハ侍れとも我/\ハ所・・々・にて 41a.01(侍れとも)
(海).ことにハ侍れとも我/\ハ所・・/\にて
(京).ことにハ侍れとも我/\ハところ/\にて
(山).事・にハ侍れとも我/\ハ所・・々・にて
(逸).事・にハ侍れとも我/\ハ所・・々・にて
18
(版).とゝまる方・おほし只人の行・・に
(海).とゝまるかたおほし只人の行・・に
(京).とゝまる方・おほし只人の行まゝに (版)41a.02[行にまかせて] [まゝかせて]に見える
(山).とゝまる方・おほし只人の行・・に
(逸).とゝまるかた多・し只人の行・・に
19
(版).まかせて行へし神明の加護かならす
(海).まかせて行へし神明の加護かならす
(京).まかせて行へし神明の加護かならす
(山).まかせて行へし神明の加護かならす
(逸).まかせて行へし神明の加護かならす
20
(版).恙・・なかるへしと云捨・て出つ哀・・さしはらく [出つゝ]元禄版後刷・明和版では[ゝ]欠損[出つ]
(海).恙・・なかるへしと云すてゝ出つあハれさしはらく
(京).恙・・なかるへしと云捨・て出つあはれさしはらく
(山).恙・・なかるへしと云捨・て出つあはれさしはらく
(逸).つゝかなかるへしと云すてゝ出つあハれさしはらく
21
(版).やまさりけらし
(海).やまさりけらし
(京).やまさりけらし
(山).やまさりけらし
(逸).やまさりけらし
22
(版). 一家に遊女もねたり萩と月
(海). 一家に遊女も寝たり萩と月
(京). 一家に遊女も寝たり萩と月
(山). 一家に遊女もねたり萩と月
(逸). 一家に遊女も寐たり萩と月
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おくのほそ道の原書(素龍筆 井筒屋本)や与謝蕪村の奥の細道を気軽に読んでみようというブログです。
変体仮名もくずし字もどんどん読もう。
芭蕉自筆本・曽良本・柿衛本・早大本・昔安本などの違いも見ていきたいと思います。
Let's read OKU-NO HOSOMICHI in the original.
与謝蕪村 奥の細道 上巻
与謝蕪村 奥の細道 下巻
12-13. 14. 15. 16-17. 18. 1.序章 001 002 003.03
2.旅立 003.03 004
3.草加 005 006.05
4.室の八島 006.06 007.05
5.仏五左衛門 007.06 008 009.01
6.日光 009.02 010 011 012.03
7.那須 012.04 013 014.06
8.黒羽 014.07 015 016.07
9.雲巌寺 016.08 017 018 19.07
10.殺生石・遊行柳 19.08 020 021.02
11.白河の関 021.03 022.06
12.須賀川 022.07 023 024 025.05
13.あさか山 025.06 026.06
14.しのぶの里 026.06 027.07
15.佐藤庄司が旧跡 027.08 028 029.07
16.飯塚 029.07 030 031.08
17.笠島 031.08 032 033.03
18.武隈 033.04 034 035.01