01.山かた領に立山寺と云山寺あり慈覚大師
02.の開基にして殊清閑の地也一見すへきよし
03.人々のすゝむるに依て尾花沢よりとつて返し
04.其間七里はかり也日いまたくれす梺の坊に
05.宿かり置て山上の堂にのほる岩に巌を
06.重て山とし松柏年旧土石老て苔滑に岩上
07.の院々扉を閉てものゝ音聞えす岸をめくり
08.岩を這て仏閣を拝し佳景寂寞として
09.こゝろすミ行のミおほゆ
10. 閑さや岩にしミ入セミの聲
11.㝡上川のらんと大石田といふ所に日和を待
12.こゝに古き誹諧の種こほれて忘れぬ花の
13.むかしをしたひ芦角一聲の心をやハらけ
14.此道にさくり足して新古ふた道にふミまよふ
15.といへともみちしるへする人しなけれはとわりなき
16.一巻のこしぬこのたひの風流爰に至れり
17.もかミ河ハみちのくより出て山形を
18.水上とすこてんはやふさなと云おそろしき
19.難所有板敷山の北をなかれて果ハ酒田の海に
20.入左右山覆ひ茂ミの中に船を下す是に
21.稲つミたるをやいなふねといふならし
22.白糸の瀧ハ青葉の隙/\に落て仙人堂
23.岸に臨て立水みなきつて船あやうし
注:
01(立山寺) は(立石寺)の誤りです。
02(開基にして) 版30b.05(開基に・て) 版本では(し)が脱落しています。
版本系で、(開基にして)と(し)の脱落のないのは、蕪村以外では、管見では、「蕉門七書」以外見当たりませんでした。
17(もかミ河ハ) [もがミ河を][を]消し右に[ハ]を挿入しているようです。
青の部分が見せ消ちで、(を)の取り消しを示し、赤丸の(ハ)に訂正しているようです。
もすかすると、「を」を上書きして「は(者)」に訂正しようとして、うまくいかず紛らわしいので右側に(ハ)と訂正したのかもしれません。
---------------------------------------------------------
略語記号:
(版):明和版 おくのほそ道
(海):海の見える杜美術館蔵
(京):京都国立博物館蔵
(山):山形美術館蔵
(逸):逸翁美術館蔵
版本に対して異同の色分け
黄色:漢字vsかな 橙色:送り仮名 水色:異体字 水色:別字 赤色:誤字・脱字・衍字
(異体字に関して一つの目安とお考え下さい)
01
(版).山形・領に立石寺と云・山寺・あり慈覚大師 30b.04
(海).山形・領に立石寺と云・山てらあり慈覚大師
(京).山かた領に立山寺と云・山寺・あり慈覚大師
(山).山形・領に立石寺といふ山寺・有・慈覚大師
(逸).山かた領に立石寺といふ山寺・有・慈覚大師
02
(版).の開基に・て殊・・清閑の地也一見すへきよし [開基にて][開基にして]が正しい
(海).の開基に・て殊・・清閑の地也一見すへきよし [開基に(尓)て]
(京).の開基にして殊・・清閑の地也一見すへきよし [開基に(尓)して]
(山).の開基に・て殊・・清閑の地也一見すへきよし [開基に(尓)て]
(逸).の開基にしてことに清閑の地也一見すへきよし [開基にして]
03
(版).人々のすゝむるに依て尾花沢よりとつて返し
(海).人々のすゝむるに依て尾花沢よりとつて返し [尾花沢より][り][る]にも見える
(京).人々のすゝむるに依て尾花沢よりとつて返し
(山).人々・すゝむるに依て尾花澤よりとつて返し
(逸).人々のすゝむるに依て尾花沢よりとつて返し
04
(版).其・間七里はかり也・日いまた暮・す梺・・の坊に 31a.01(日いまた)
(海).其・間七里計・・也・日いまたくれす梺・・の坊に
(京).其・間七里はかり也・日いまたくれす梺・・の坊に
(山).其・間七里はかりなり日いまた暮・す梺・・の坊に
(逸).その間七里はかり也・日いまた暮・すふもとの坊に
05
(版).宿・かり置て山上の堂にのほる岩に巌を
(海).宿・かり置て山上の堂にのほる岩に巌を
(京).宿・かり置て山上の堂にのほる岩に巌を
(山).宿・かり置て山上の堂にのほる岩に巌を
(逸).宿をかり置て山上の堂にのほる岩に巌を
06
(版).重・・て山とし松栢年旧土石老て苔滑・・・に岩上
(海).重・・て山とし松柏年旧土石老て苔滑・・・に岩上
(京).重・・て山とし松柏年旧土石老て苔滑・・・に岩上
(山).かさねて山とし松栢年旧土石老て苔滑・・・に岩上
(逸).重・・て山とし松柏年旧土石老て苔なめらかに岩上
07
(版).の院々扉を閉て物・の音きこえす岸をめくり
(海).の院々扉を閉て物・の音きこえす岸をめくり
(京).の院々扉を閉てものゝ音聞・えす岸をめくり
(山).の院々扉を閉て物・の音聞・えす岸をめくり
(逸).の院々扉を閉てものゝ音きこえす岸をめくり
08
(版).岩を這・て仏閣を拝し佳景寂寞として
(海).岩を這ふて佛閣を拝し佳景寂寞として [這ひて]が正しい
(京).岩を這・て仏閣を拝し佳景寂寞として
(山).岩を這・て佛閣を拝し佳景寂寞として
(逸).岩を這・て仏閣を拝し佳景寂寞として
09
(版).心・・・すミ行・のミおほゆ
(海).心・・・すミ行・のミおほゆ
(京).こゝろ・すミ行・のミおほゆ
(山).心・・・すみ行・のみおほゆ
(逸).こゝろのすミゆくのミおほゆ
10
(版). 閑・・さや岩にしみ入蝉・の聲
(海). 閑・・さや岩にしみ入セミの聲 [しみ入][しみきる]右に[入]挿入
(京). 閑・・さや岩にしミ入セミの聲
(山). しつかさや岩にしミ入蝉・の聲
(逸). しつかさや岩にしミ入蝉・の聲
11
(版).㝡上・川・のらんと大石田と云・所・・に日和を待 31b
(海).もかみ川・のらんと大石田といふ所・・に日和を待
(京).㝡上・川・のらんと大石田といふ所・・に日和を待
(山).㝡上・河・のらんと大石田といふ所・・に日和を待
(逸).㝡上・河をのらんと大石田といふところに日和を待
12
(版).爰・に古き誹諧の種・こほれて忘れぬ花の
(海).こゝに古き俳諧の種・こほれて忘れぬ花の
(京).こゝに古き誹諧の種・こほれて忘れぬ花の
(山).こゝに古き誹諧の種・こほれて忘れぬ花の
(逸).こゝに古き誹諧のたねこほれて忘れぬ花の
13
(版).むかしをしたひ芦角一聲の心・・をやハらけ
(海).むかしをしたひ芦角一聲の心・・をやハらけ
(京).むかしをしたひ芦角一聲の心・・をやハらけ
(山).むかしをしたひ芦角一声の心・・をやハらけ
(逸).むかしをしたひ芦角一聲のこゝろをやハらけ
14
(版).此道にさくりあしゝて新古ふた道にふみまよふ
(海).此道にさくりあしゝて新古ふた道にふみまよふ
(京).此道にさくり足・して新古ふた道にふミまよふ
(山).此道にさくりあしゝて新古ふた道にふミまよふ
(逸).此道にさくりあしゝて新古ふた道にふミまよふ
15
(版).といへともみちしるへする人しなけれはとわりなき
(海).といへともみちしるへする人しなけれはとわりなき
(京).といへともみちしるへする人しなけれはとわりなき
(山).といへともみちしるへする人しなけれはとわりなき
(逸).といへともミちしるへする人しなけれハとわりなき
16
(版).一巻・残・しぬこのたひの風流爰・に至・れり 32a.01(爰に) [一巻・][を]脱
(海).一巻・のこしぬこのたひの風流こゝに至・れり
(京).一巻・のこしぬこのたひの風流爰・に至・れり
(山).一巻・のこしぬ此・たひの風流こゝに至・れり
(逸).一巻をのこしぬこのたひの風流こゝにいたれり
17
(版).㝡上・川ハみちのくより出て山形を
(海).㝡上・川ハみちのくより出て山形を
(京).もかミ河ハみちのくより出て山形を [もがミ河を][を]消し右に[ハ]
(山).もかみ河ハみちのくより出て山形を
(逸).もかみ河ハみちのくより出て山形を
18
(版).水上とすこてんはやふさなと云・おそろしき
(海).水上とすこてんはやふさなと云・おそろしき
(京).水上とすこてんはやふさなと云・おそろしき
(山).水上とすこてんはやふさなと云・おそろしき
(逸).水上とすこてんはやふさなといふおそろしき
19
(版).難所有板敷・山の北を流・・て果ハ酒田の海に
(海).難所有板敷・山の北を流・・て果ハ酒田の海に
(京).難所有板敷・山の北をなかれて果ハ酒田の海に
(山).難所有板敷・山の北を流・・て果ハ酒田の海に
(逸).難所有板しき山の北を流・・て果ハ酒田の海に
20
(版).入左右山覆ひ・茂ミの中に船を下す是に
(海).入左右山覆ひ・茂ミの中に船を下す是に
(京).入左右山覆ひ・茂ミの中に船を下す是に
(山).入左右山覆ひ・茂ミの中に舟を下す是に
(逸).入左右山覆ひて茂ミの中に舟を下す是に
21
(版).稲・つミたるをやいな船・といふならし
(海).稲・つミたるをやいなふねといふならし
(京).稲・つミたるをやいなふねといふならし
(山).いねつミたるをやいなふねといふならし
(逸).稲・つミたるを・いなふねといふならし
22
(版).白糸・の瀧ハ青葉の隙・/\に落て仙人堂 32b.01(仙人堂)
(海).白糸・の滝ハ青葉の隙・/\に落て仙人堂
(京).白糸・の瀧ハ青葉の隙・/\に落て仙人堂
(山).白糸・の瀧ハ青葉のひま/\に落て仙人堂
(逸).白いとの瀧ハ青葉のひま/\に落て仙人堂
23
(版).岸に臨・・て立水ミなきつて舟・あやうし
(海).岸に臨・・て立水ミなきつて舟・あやうし
(京).岸に臨・・て立水みなきつて船・あやうし
(山).岸に臨・・て立水ミなきつて舟・あやうし
(逸).岸にのそみて立水みなきつてふねあやうし
次のページ.下03.
前のページ.下01.