おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 060 ルビ付
02「花」 文字欠損のため他版参照
おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 060 変体仮名
01 這出よ可(か)ひや可(か)下のひきの声
02 まゆ者(は)きを俤尓(に)して紅粉の花
03 蝅飼する人八(は)古代のす可(か)多(た)哉 曽良
04 山形領尓(に)立石寺と云山寺阿(あ)り
05 慈覚大師の開基耳(に)て殊清
06 閑の地也一見すへきよし人々
07 のすゝむる尓(に)依て尾花沢より
08 と川(つ)て返し其間七里者(は)可(か)り也
注:
05 開基にて---井筒屋系の板本は、元禄版・明和版・寛政版・全て「開基にて」となっているが、芭蕉自筆本・曽良本・柿衛本は「開基にして」となっている。また、板本の原本の西村本も「開基にして」となっているので、板本の「開基にて」は板本特有の誤写と見て間違いないだろう。
去来(下郷本)では、この部分が「開基にて」となっているので、板本からの写しの可能性が高く、去来筆という可能性は低い。これは、039.03「落て」の誤写と同じ構造になっているので、同じことが偶然重なるとは考えられない。よって、去来(下郷本)は井筒系の板本からの写しであると確定される。
底本05「開基にて」 西村本「開基にして」
西村本「尓し」が「耳」に似ているために誤刻したものと思われる。
おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 060
濁点・現代仮名・(読点は曽良本に従う)
01 這出よかひやが下のひきの声
02 まゆはきを俤にして紅粉(べに)の花
03 蝅飼(こがひ)する人は古代のすがた哉 曽良
04 山形領に、立石寺(りふしやくじ)と云、山寺あり、
05 慈覚大師の開基にて、殊(ことに)、清
06 閑の地也、一見、すべきよし、人々
07 の、すゝむるに、依て、尾花沢より、
08 とつて返し、其間(そのあひ)、七里ばかり也、
諸本の異同の対照
井筒屋本
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柿衛本
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曽良本
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芭蕉自筆本
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060.01(這出よ)
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49.04(這出て)
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22a.01(這出よ)
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18a.12(這出よ)
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060.01(ひきの声)
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49.04(蟾の声)
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22a.01(ひきの声)
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18a.12(ひきのこゑ)
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060.02(まゆはきを俤にして紅粉の花)
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(まゆはきを俤にして紅粉の花)欠
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22a.02(まゆはきを俤にして紅粉の花)
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18a.13(まゆはきを俤にして紅粉の花)
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060.03(蚕飼する)
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49.05(蚕飼する)
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22a.03(蚕飼する),(子飼する)(子)消し右に(蚕)
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18a.14(子飼する)
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060.03(すかた哉)
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49.05(姿かな)
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22a.03(すかたかな)
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18a.15(姿哉)
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060.04(立石寺と云山寺あり)
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49.06(立石寺と云山寺あり)
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22a.04(立-石寺と云、山寺有),(石)(シヤク)ルビ有り
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18b.01(立石寺と云山寺有)
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060.05(開基にて)
原本の西村本では、「開基にして」元禄版、明和版、寛政版、全て「開基にて」となっているので、板本の誤刻。
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49.07(開基にして)
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22a.04-05(開基にして),(開記にして)(記)見せ消ち右に(基)
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18b.02(開記にして)
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060.05-06(清閑の地也)
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49.07-08(清閑の地なり)
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22a.05(清-閑の地也)
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18b.02-03(清閑の地也)
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060.07(すゝむるに依て)
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49.09(すゝむるによりて)
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22a.06(すゝむるに仍て)
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18b.03-04(すゝむるに仍て)
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060.08(とつて返し)
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49.09-10(取てかへし)
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22a.06(とつて返し)
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18b.04(とつて返し)
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060.08(七里はかり也)
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49.10(七里計なり)
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22a.07(七里計なり)
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18b.05(七里計なり)
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校本おくのほそ道 p573-575