2020年8月21日金曜日

東国名勝志と松島名所文章 壺碑の絵の流用について

下記は東国名勝志の「壺の石碑」の場面です。

東国名勝志 作:鳥飼酔雅 画:月岡丹下(月岡雪鼎) 宝暦十二年(1762) 国会図書館
東国名勝志 作:鳥飼酔雅 画:月岡丹下 宝暦十二年(1762)
(画像をクリックすると大きな画像が出ます)

この絵が次の本に流用されています。

松嶋名所文章(松嶋名所文庫)  文政四年(1821) 再板 東京書籍図書館
松嶋名所文庫 文政四年(1821) 再板
(画像をクリックすると大きな画像が出ます)

画に添えられている文章は、東国名勝志では、多賀城碑と坂上田村麻呂の伝説を結びつけるために、アクロバティックな解釈と改変が行われているのですが、松嶋名所文章では、ほぼ正確な多賀城碑の文言に差し替えられています。(下記 資料1.2参照)

また、松嶋名所文章は往来物ではありますが、本文は、松尾芭蕉の「松嶋賦」が用いられています。

松嶋名所文章の右下に「東玉画」とあります。

東玉画

この記述から、この画の作者を「黒男亭東玉」とするのが一般的なようです。
国会図書館サーチ

黒男亭東玉は、「浅草詣文章」という本に名を刻んでいます。

浅草詣文章 作:中原耕張  画:黒男亭東玉画 享和二年(1802) 東京書籍図書館
浅草詣文章 作:中原耕張  画:黒男亭東玉画 享和二年(1802)

黒男亭東玉と月岡丹下が同一人物である可能性も考えてみましたが、両者では画風がかなり違うように思います。
 
どうしてこの絵を流用したのかは謎と言う外ありません。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
資料1
東国名勝志 作:鳥飼酔雅 画:月岡丹下 宝暦十二年(1762) 
国会図書館 巻1. 10b

壷の石碑

みちのくの おくゆかしくも 
 おもほゆる  つぼのいしぶミ 
  外の はま風 
當國の名碑也此石高サ六尺
幅三尺厚サ一尺五寸也
神亀元年大野朝臣東人の
築所也其後田村丸又改爰を
日本の中央として碑の表に諸方への
道法をしるせり [道法(みちのり)]

緒絶の橋
人こゝろおだへの
      はしに
       立帰り
木の葉ふり
    しく
     秋の
      かよひ路
      
戸だへのはし共
丸木ばしとも
よめり東路のとだへ白玉のをだへ
みちのくのとだへとも
 いづれもあやうきさまを
         よめり
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

資料2
松嶋名所文章(松嶋名所文庫)  文政四年(1821) 再板 東京書籍図書館

     去京一千五百里
     去蝦夷国一百廿里
多賀城  去常陸国四百十二里
     去下野国二百七十四里
     去靺鞨国三千里

此城神亀元年歳次甲子
按察使兼鎮守府将軍
從四位上勲四等大野朝臣
東人之所置也
天平寶字六年歳次壬寅
参議東海東山節度使
從四位仁部省卿兼按
察使鎮守府将軍藤原
恵美朝臣朝獦修造也
天平寶字六年十二月一日


※橋の説明書きは「をたへの橋」と書かれているはずですが、「を」が判読困難です。

松嶋名所文章では、東国名勝志の「緒絶の橋(おたへのはし)」の説明文を削除し、「多賀城碑」の文面に差し替えています。そして、川にかかる橋のところに、上記の説明書きが書き加えられています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

参考ページ
松尾芭蕉の壷碑と多賀城碑について
多賀城碑 三船真人と見雲真人と三熊野ノ松戸
 

与謝蕪村 奥の細道 上巻
与謝蕪村 奥の細道 下巻
12-13. 14. 15. 16-17. 18.


表紙 000 
1.序章 001 002 003.03
2.旅立 003.03 004 
3.草加 005 006.05
4.室の八島 006.06 007.05
5.仏五左衛門 007.06 008 009.01
6.日光 009.02 010 011 012.03
7.那須 012.04 013 014.06
8.黒羽 014.07 015 016.07
9.雲巌寺 016.08 017 018 19.07
10.殺生石・遊行柳 19.08 020 021.02
11.白河の関 021.03 022.06
12.須賀川 022.07 023 024 025.05
13.あさか山 025.06 026.06
14.しのぶの里 026.06 027.07
15.佐藤庄司が旧跡 027.08 028 029.07
16.飯塚 029.07 030 031.08
17.笠島 031.08 032 033.03
18.武隈 033.04 034 035.01
19.宮城野 035.02 036 037.04
20.壺の碑 037.05 038 039 040.03
21.末の松山 040.04 041 042.04
22.塩竈 042.04 043 044.04
23.松島 044.05 045 046 047 048 049.05
24.石巻 049.06 050 051.07
25.平泉 051.08 052
053 054 055.01
26.尿前の関 055.02 056 057 058 059.01
27.尾花沢 059.02 060.03
28.立石寺 060.04 061
29.最上川 062