2015年8月21日金曜日

おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 016(08b)

おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 08b 底本
おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 08b 底本

おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 08b ルビ付
おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 08b ルビ付

文字欠損のため他版引用 08b.01「と」
 文字欠損のため他版参照 08b.01「と」
元禄A・元禄T・寛政I別版A別版C

文字欠損のため他版引用 08b.02「尓(に)て」
文字欠損のため他版参照 08b.02「にて」
元禄A元禄C・元禄T・寛政I別版B別版C
・元禄Cと元禄Tの欠損箇所がほぼ同じである。

文字判別難のため他版引用 08b.03「志(し)」
文字判別難のため他版参照 08b.03「し(志)」
西村本・元禄A元禄C・元禄T・明和I明和W寛政I別版B別版C
・西村本では「士+心」の部分に繋がりがある。版本では別版Cに工夫がみられる。

文字欠損のため他版引用 08b.03「覚え」
文字欠損のため他版参照 08b.03「覚え」
西村本・元禄A明和W・元禄T・明和I寛政I別版B別版C
・西村本では「え」と判別できるが、元禄版以降は、「え」と読むのは難しい。
・別版Cは「え」と読めるように工夫しているように思える。

文字判別比較のため他版引用 08b.03「覚えらる」
08b.03「覚えらる」
元禄A書写A別版D別版E別版K書写D蕪村・下郷

文字判別比較のため他版引用 08b.03「覚へらる」
08b.03「覚へらる」
元禄A・元禄T・別版F書写C書写E・鼇頭
・別版Fは明和版を手本にしている可能性があり、「覚」と「羅」の間つなぎとして曖昧にしているように思える。

文字判別比較のため他版引用 08b.03「覚らる」
08b.03「覚らる」
書写B菅菰W
・上記の例からすると菅菰は「覚える」とすべきかもしれないが、「覚らる」と見るのが妥当であろう。「岩波文庫」でも「覚らる」と翻字している。

文字判別比較のため他版引用 08b.03「覚らる」

自筆本・曽良本・河西本・柿衛本・西村本
・自筆本が発見される前までは、曽良本→河西本→柿衛本→西村本を見た場合、曽良本の表記は、「覚える」を「覚えラルる」と訂正したように見える。(村松友次説参照)
 しかし、自筆本の「覚らる」を踏まえた場合、曽良本の表記は、「覚らる」の「ら」が「え」に見えるため誤読しないようにと、「ラル」と傍記したと見ることができる。(上野洋三説参照)
 後者が正しいと思われるが、とすると、河西本も柿衛本も、曽良本の「ら」を「え」と誤読して誤記していたことになる。
 西村本以降の版本や書写本に、「覚えらる」「覚へらる」「覚らる」のゆれがあるのは、素龍が「ら」と「え」を取り違えたことも要因の一つかも知れない。
 また、素龍が曽良本を誤読していたということから、曽良本の「ラル」の傍記に関しては、素龍が付記したものではないということが断定できる。
 更に、柿衛本の「覚えらるゝ」が西村本では「覚えらる」に変わったのは、曽良本に「ラル」を付記した者の指摘を受けて元に戻したということなのかもしれない。

 また、曽良本を「覚える」と読み「る」を見せ消ちと考えるなら、「覚えラル」とも読めるので、西村本の読みとなる。 2019.2.14 追加


曽良本(覚ら) 西村本(覚え)
西村本の「え」は曽良本の「ら」とかなり似ている。
素龍は故意に曽良本の「ら」に近い「え」を書したのかもしれない?
 
文字判別比較のため他版引用 
 08b.03「覚えらる」「覚へらる」「覚らる」

書写F(吉川)・昔安本・永機W
・版本系ではない、吉川、昔安、永機も「覚えらる」「覚へらる」「覚らる」の三様に分かれたが、素龍の誤読が直接影響しているとかどうかは分からない。ただ、昔安は、09a.08「おほえす」でも「おほへす」としている。

文字脱落のため他版引用 08b.04「まね可(か)」

西村本 ・元禄A元禄C元禄K ・元禄T ・明和I明和H寛政I別版A別版C
・明和Hは「か」の脱落を墨書きで補ったもの。
・雲英末雄によれば、「別版(有丁付本)は、装丁や紙質をみると時代が新しく、元禄版との関係を考えるのは無理だが、明和版ときわめて近い関係にあり、あるいは明和版のテキストをもとにかぶせ彫りした偽版ということができるかも知れない。※1」とあるが、別版Aの「可(か)」は、元禄A・元禄Cとそっくりである。このことから、別版Aは元禄C程度以上の元禄版を参照しているものと思われる。
 ・雲英末雄によれば、「寛政版は、明和版の無署名跋のある一丁分のみをとりのぞき、本文・跋文(素龍・去来・蝶夢)を全巻五十七丁にわたってかぶせ彫りにしたもの※2」とのことであるが、おそらく寛政版は、明和版をかぶせ彫りしたのではなく、本文は元禄版のかなり質のよい版を用いてかぶせ彫りをしたのではないかと思われる。少なくとも質のよい元禄版を参照しているのは間違いないであろう。
 ・「か」の欠落した、元禄T・明和I・明和Wからでも、文脈的に「か」を類推することは可能であろうが、欠落前の文字に近い「か」を偶然に彫り上げる確率はかなり低いものと思われる。

注:
※1、元禄版 おくのほそ道 雲英末雄編 勉誠社 p138
・別版(有丁付本)は当ブログでは、別版A別版Bに対応する。 また、雲英末雄分類による別版(桜寿軒本)は、別版Cに対応する。(早稲田大学の書誌によれば別版A・B・Cともに雲英末雄旧蔵)
※2、同上 p129

文字欠損のため他版引用 08b.06「連(れ)」

元禄A元禄K・元禄T・明和W寛政I別版B別版C

文字欠損のため他版引用 08b.06「を」

元禄A元禄C・元禄T・明和W寛政I別版A別版C

文字欠損のため他版引用 08b.07「哉」

元禄A・元禄T・明和I明和W寛政I別版A別版C

国会図書館デジタルコレクション 元禄T(底本) /  蕪村
国文学研究資料館 元禄K寛政K別版K其角堂蔵版(永機)奥の細道
北海道大学図書館 明和H
愛知県立大学図書館  明和I寛政I
立命館大学図書館 元禄R明和R寛政Rおくのほそみち 
Google ブックス 慶應義塾大学 元禄G 後ろから表示される。
早稲田大学図書館  元禄A 元禄B 元禄C明和W寛政A 寛政B
 別版A 別版B 別版C 別版D 別版E 別版F 永機W
 書写A 書写B 書写C 書写D 書写E 書写F(吉川惟足)奥の細道

芭蕉自筆奥の細道 上野 洋三 桜井 武次郎 編 岩波書店 自筆本
天理図書館善本叢書〈和書之部 第10巻〉芭蕉紀行文集 曽良本
河西本 おくのほそ道 村松友次 笠間書院 河西本
素龍筆 柿衛本 おくのほそ道 岡田利兵衛編 新典社 柿衛本
影印 おくのほそ道 櫻井武次郎編 双文社出版 西村本
校本おくのほそ道 西村真砂子 編著 福武書店 p252  影印  昔安本(東大本
天理図書館善本叢書〈和書之部 第10巻〉芭蕉紀行文集 下郷本(去来?)
鼇頭奥之細道 村松友次 笠間書院  鼇頭
新釈おくの細路 木村架空 著 中央堂 明29.9 活版A

おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 08b 変体仮名
01 我国氏神正八まんとち可(か)ひしも
02 此神社尓(に)て侍と聞八(は)感應殊
03 志(し)きり尓(に)覚え羅(ら)る暮れ八(は)桃翠
04 宅に帰る
05 修験光明寺と云有そこ尓(に)まね
06 連(れ)て行者堂を拝す
07  夏山尓(に)足駄を拝む首途哉
08 當国雲岸寺のおく尓(に)佛頂和尚

おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 08b 平仮名
01 我国氏神正八まんとちかひしも
02 此神社にて侍と聞は感應殊
03 しきりに覚えらる暮れは桃翠
04 宅に帰る
05 修験光明寺と云有そこにまね
06 れて行者堂を拝す
07  夏山に足駄を拝む首途哉
08 當国雲岸寺のおくに佛頂和尚、

注:
01 我国---我国(わがくに)
01 正八まん [永機06b.05(正八幡)]
02 此---此(この)
02 侍と---侍(はべる)と
02 聞は---聞(きけ)ば
02 殊---殊(ことに)
03 覚えらる  [永機06b.07(覚らる)]
03 暮れは---暮(くる)れば [永機06b.07(くるれは)]
03-04 桃翠宅に帰る [永機06b.07-08(桃翠か家にかへる)]
05 云有(いふあり)
05-06 まねれて---まね{か}れて [永機06b.09(まねかれて)]
[西村本・元禄版・寛政版 (まねかれて) 底本の明和版のみ{か}の欠損]

おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 08b 平仮名
濁点・(読点は曽良本に従う)
01 我国(わがくに)、氏神正(しやう)八まんと、ちかひしも、
02 此(この)神社にて侍(はべる)と聞(きけ)ば、感應殊(ことに)
03 しきりに覚えらる、暮(くる)れば、桃翠(たうすい)
04 宅(たく)に帰る
05 修験光明寺(しゆげんくわうみやうじ)と云有(いふあり)、そこにまね{か}
06 れて、行者堂を拝す
07  夏山に足駄を拝む首途(かどで)哉
08 當国、雲岸寺のおくに、佛頂和尚、

諸本の異同の対照
井筒屋本
柿衛本
曽良本
芭蕉自筆本
08b.01(我国)
14.03(わか国)
06a.06(我国)
05a.14-15(我国)
08b.01(正八まん)
14.03(正八幡)
06a.07(正八まん)
05a.15(正八まん)
08b.02(侍と)
14.04(侍と)
06a.07(侍ると)
05a.16(侍ると)
08b.02(聞は)
14.04(聞は)
06a.07(聞は)
05a.16(きけは)
08b.03(しきりに)
14.05(しきりに)
06a.08(しきりに),()右に補う
05a.16(しきり),()
08b.03(覚えらる)
14.05(覚えらるゝ)
06a.08(覚らる),()の右に(ラル)ルビ有り
(覚えラルる)とも読める
05a.16(覚らる)
08b.04(帰る)
14.06()
06a09(帰る)
05b.01(帰る)
08b.05-06(まねかれて)
明和版では(まねれて)
14.07-08(まねかれて)
06b.01(まねかれて)
05b.02(まねかれて)
08b.07(拝む)
14.09(おかむ)
06b.03(おかむ)
05b.04(おかむ)
08b.07()
14.09(かな)
06b.03()
05b.04()
08b.08(佛頂和尚)
14.10(佛頂和尚の)
06b.04(佛頂和尚の),()見せ消ち
05b.05(佛頂和尚の)


与謝蕪村 奥の細道 上巻
与謝蕪村 奥の細道 下巻
12-13. 14. 15. 16-17. 18.


表紙 000 
1.序章 001 002 003.03
2.旅立 003.03 004 
3.草加 005 006.05
4.室の八島 006.06 007.05
5.仏五左衛門 007.06 008 009.01
6.日光 009.02 010 011 012.03
7.那須 012.04 013 014.06
8.黒羽 014.07 015 016.07
9.雲巌寺 016.08 017 018 19.07
10.殺生石・遊行柳 19.08 020 021.02
11.白河の関 021.03 022.06
12.須賀川 022.07 023 024 025.05
13.あさか山 025.06 026.06
14.しのぶの里 026.06 027.07
15.佐藤庄司が旧跡 027.08 028 029.07
16.飯塚 029.07 030 031.08
17.笠島 031.08 032 033.03
18.武隈 033.04 034 035.01
19.宮城野 035.02 036 037.04
20.壺の碑 037.05 038 039 040.03
21.末の松山 040.04 041 042.04
22.塩竈 042.04 043 044.04
23.松島 044.05 045 046 047 048 049.05
24.石巻 049.06 050 051.07
25.平泉 051.08 052
053 054 055.01
26.尿前の関 055.02 056 057 058 059.01
27.尾花沢 059.02 060.03
28.立石寺 060.04 061
29.最上川 062