おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 039 ルビ付
おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 039 変体仮名
01 と有聖武皇帝の御時尓(に)当れり
02 む可(か)しよりよみ置る哥枕おほく
03 語傳ふといへとも山崩川落て道
04 阿(あ)らた万(ま)り石八(は)埋て土尓(に)可(か)くれ
05 木八(は)老て若木尓(に)可(か)八(は)れ者(は)時移り
06 代変して其跡多(た)し可(か)ならぬ事
07 の三(み)を爰尓(に)至りて疑なき千
08 歳の記念今眼前尓(に)古人の心
注:
01 有---有り
02 置る---置ける
03 崩---崩れ
03 落て---井筒屋系の板本は、元禄版・明和版・寛政版・全て「落て」となっているが、芭蕉自筆本・曽良本・柿衛本は「流て(ながれて)」となっている。また、板本の原本の西村本も「流て」となっているので、板本の「落て」は板本特有の誤写と見て間違いないだろう。
去来(下郷本)では、この部分が「落て」となっているので、板本からの写しの可能性が高く、去来筆という可能性は低い。また、060.05「開基にて」の誤写も同じ構造になっているので、同じことが偶然重なるとは考えられない。よって、去来(下郷本)は井筒系の板本からの写しであると確定される。
底本03「落て」 西村本「流て」 去来(下郷本)「落て」
おくのほそ道 素龍筆 井筒屋本 039
濁点・現代仮名・(読点は曽良本に従う)
01 と有り、聖武皇帝の御時に当れり、
02 むかしより、よみ置ける哥枕、おほく、
03 語傳ふといへども、山崩れ、川落て、道
04 あらたまり、石は埋(うづもれ)て土にかくれ、
05 木は老て若木にかはれば、時移り、
06 代(よ)変じて、其跡たしかならぬ事
07 のみを、爰に至りて、疑なき、千
08 歳の記念(かたみ)、今眼前に、古人の心
諸本の異同の対照
井筒屋本
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柿衛本
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曽良本
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芭蕉自筆本
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039.01(有)
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32.02(あり)
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15a.01(有)
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12a.03(有)
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039.01(当れり)
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32.03(あたれり)
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15a.01-02(あたれり)
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12a.04(あたれり)
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039.02(むかしよりよみ置る)
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32.03(昔よりいみをける)
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15a.02(むかしより、よみ置る)
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12a.04-05(むかしよりよみ置る)
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039.02(おほく)
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32.04(おほく)
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15a.02(多く),(多)の右に(ヲゝ)ルビ有り
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12a.05(多く)
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039.03(語傳ふ)
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32.04(かたりつたふ)
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15a.02-03(かたり傳ふ)
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12a.05(かたり傳ふ)
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039.03(山崩川落て),
西村本(山崩川流て)
去来下郷(山崩川落て)
菅菰抄(山崩川落て)
吉川惟足(山崩川流て)
晋其角(山崩川流て)
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32.04-05(山崩れ川なかれて)
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15a.03(山崩、川流て)
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12a.06(山崩川流て)
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039.04(埋て)
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32.05-06(埋れて)
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15a.04(埋て)
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12a.07(埋て)
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039.05(若木にかはれは)
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32.06-07(わか木にかはり)
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15a.04-05(若木にかはれは)
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12a.08(若木にかはれは)
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039.06-07(事のみを)
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32.08(事のみ)
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15a.06(事のみを),(を)右に補う
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12a.10(事のみ)
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039.07(爰に至りて)
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32.08(爰に至りて)
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15a.06(爰至りて)
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12a.10(爰至りて)
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039.07(疑なき)
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32.09(うたかひなき)
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15a.06(うたかひなき)
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12a.10(うたかひなき)
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039.08(今)
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32.09(いま)
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15a.07(今)
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12a.11(今)
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